古今東西で人々の暮らしに役立てられている身近な薬草

ヨモギ

生理痛、冷え症など婦人家系の疾患、外傷、鼻血などの際の止血と消炎、湿疹やニキビなどの皮膚病にと多岐にわたる使い方で知られる

林真一郎(薬剤師 グリーンフラスコ(株)代表)


ヨモギは北海道から九州まで日本全国の至る所に自生するキク科の植物で、茎は群がるように生え、9~10月の開花期には高さが50~100センチに達します。葉の表面は緑色ですが、裏面は綿毛が密生して灰白色に見えるのが特徴です。

ヨモギの名前の由来は「善く萌え出る草」からついたとする説や「良く燃える木」からついたとする説など、諸説が知られています。ちなみにお灸で用いるモグサは、ヨモギの葉を原料にして作られます。わが国ではヨモギの若葉を餅や団子に入れてヨモギ餅として食したり、茎葉を乾燥させてから浴用剤にして用いてきた歴史があります。
薬草としての用途は、生理痛や生理不順、冷え症など婦人科系の疾患や外傷、鼻血、痔疾などの際の止血と消炎を目的として、また湿疹やニキビ、水虫、たむしなどの皮膚病にとたいへん多岐にわたる使い方が知られています。こうした多様な用途に適応が可能なのは、ヨモギにたくさんの種類の有効成分が含まれていることの証でもあります。
ヨモギの香り成分としては、セージ(薬用サルビア)の精油成分であるツヨン、ユーカリの精油成分であるシネオールなど抗菌力の強い成分や、ジャーマンカモミールの精油成分によく似て消炎作用を発揮するアルタブシンが知られています。この他にも収れん、止血作用の本体と考えられるタンニンも豊富に含まれています。
ヨモギは私たちになじみのある薬草なので、東洋のハーブと思われがちですが、実は世界中で使われているのです。ヨーロッパではヨモギの仲間であるワームウッド(ニガヨモギ)が、その和名のとおり苦味健胃薬として用いられたり、線虫などの害虫の駆除にも役立てられています。


ハーブの有益な使用法は、そのハーブが生えている土地に住む先住民の人々の智恵が語りつがれて現在に至っているケースが多いのですが、ヨモギも例外ではあ りません。たとえばアイヌの人々には、ヨモギを聖なる神を宿すとされる「カムイノヤ(神の揉み草の意味)」と呼んで、悪夢を見たときのお清めに葉や茎で身体を叩いたり、ヨモギで作った人形を飾り、疫病神を追い払う儀式などがあり、実際には様々な用途にヨモギを活用しました。一方、中南米の先住民の人々はヨ モギの仲間であるセイジブラシを邪気払いやスエットロッジでの心身の浄化のための祈りの儀式に用いています。
遠く離れた土地であるのに、同じ植物を同じような目的で用いている点は民族植物学の視点からも興味深い事実だと思います。
最近では、ヨモギはその強力な抗菌力から発展途上国で、結核などの予防に役立てられています。
このようにヨモギは古今東西にわたって世界中で人々の暮らしに役立てられ、しかもその価値は高まる一方です。

1.ヨモギのハーブティー

風邪や発熱、のどの痛み、頭痛や冷え症、生理不順にはヨモギのハーブティーをお試しください。ヨモギの葉を摘んで乾燥した後、およそ5~10gを熱湯500mlで5分以上抽出し、1日3回毎食後に服用します。食あたりや腹痛にはヨモギの生の葉をしぼって服用する方法もあります。カキの葉やハトムギ、クマザサなどの他の薬草とブレンドしても楽しめます。

2.ヨモギの入浴剤

肩こり、腰痛、神経痛、生理痛などの痛みや湿疹、腫れ物などの皮膚病にはヨモギの入浴剤も効果的です。精油成分による血行促進作用や、消炎、鎮痛作用に加えて、タンニンによる収れん作用が期待できます。ヨモギの葉を乾燥させ、50~100gを木綿の布袋に入れて浴槽に浮かべ、よく揉みだします。痛い部分に布袋をあてて湿布するのも効果的です。ベニバナやオオバコなどの他の薬草とブレンドするのも良い方法です。

3.ヨモギのスキンローション

ヨモギは昔から美肌効果のある化粧水の原料としても用いられてきました。ヨモギの若葉を乾燥させたもの200gを1リットルの熱湯で抽出液が冷めるまで時間をかけて抽出します。次にそれを布などでていねいに漉し、さらに全量の5%のエチルアルコールを加えてできあがりです。余った分は冷蔵庫で保管します。


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