痴呆に効果を発揮する長寿の樹

イチョウ

「生きた化石」と呼ばれるほど生命力が強い植物で、
その有効成分の効用は痴呆に限らず、
めまい、耳鳴り、老人性のうつ症など多岐にわたります。

林真一郎(薬剤師 グリーンフラスコ(株)代表)


イチョウといえばわが国では知らない人がいないほど有名ですが、イチョウの葉から得た成分が痴呆の治療薬としてドイツやフランスで最も信頼されてい ることを知る人は少ないでしょう。しかも痴呆のタイプであるアルツハイマー型と脳血管型(脳循環不全型)のいずれのケースにも有効であるため、世界40ヵ 国以上で医薬品や健康食品として用いられているのです。イチョウはわが国でも古くから長寿の樹として有名ですが、今から2億5千万年も前から地球上に存在 し、「生きた化石」と呼ばれるほど生命力が強い植物です。広島に原爆が投下され、廃虚と化した地に最初に芽生えたのもイチョウであったと伝えられています。また明治29年にはわが国の研究者がイチョウが精子を持つことを発見し、世界中の植物学者を驚かせたこともありました。
さて、イチョウの葉の有効成分の効用は痴呆に限らず、めまい、耳鳴り、老人性のうつ病など多岐にわたりますが、現在までに2種の成分が確認されています。ケルセテンやケンフェロールといったフラボノイド配糖体とギンコライドやビロバリドといったテルペンラクトンの2種で、前者は毛細血管の細胞を酸化から守り、血管の若さを保つ働きがあり、後者は血液循環を促進し、脳の隅々まで酸素と栄養素を運ぶことを可能にします。また私たちは炭水化物、脂肪、タンパク質の3つを食事で摂取してエネルギー源としていますが、脳の活動のエネルギーはブドウ糖のみに限られます。この脳でのブドウ糖の代謝能率がイチョウ葉の成分によって高められることも確認されています。イチョウ葉に限らずハーブには多様な成分が含まれているため、医薬品のように成分と作用との関係が簡単には決められませんが、こうした成分が互いに相乗効果を発揮しているものと考えられます。


イチョウは中国東部の原産とされていますが、わが国にも原産していたようで、ヨーロッパの研究者が薬用植物として注目し、種子が欧米に持ち込まれました。 現在ではイチョウ葉の抽出物の原料として欧米でも大規模なプランテーションが行われています。1975年にフランスで医薬品として認可された際につけられた名前の「タナカン」はフランスで最も知名度の高い日本人である「田中角栄」から命名されたといわれます。高齢化社会を迎え、活力ある社会の維持が望まれ る中で、わが国の医学界がこうした自然薬(ナチュラルメディスン)の有効性や有用性を1日も早く認め、臨床応用を始めることを期待したいと思います。

1.ハーブティー

●記憶力の向上や痴呆の予防に
イチョウ葉三グラムを熱湯200ミリリットルで3分間抽出し、1日3回毎食後に服用します。アロマテラピーの分野で脳の若さを保つハーブとして知られるローズマリーや脳をリフレッシュするペパーミントと等量ずつブレンドしても効果的です。その際にはティーカップから立ちのぼるローズマリーやペパーミントの香りを深呼吸して吸入するとアロマテラピー効果が得られるため相乗効果が期待できます。またこのハーブティーは毛細血管を保護するため、網膜症や腎炎、神経炎といった糖尿病の合併症の予防にも効果があり、ハーブティーは砂糖を入れないことからもおすすめできます。

2.チンキ剤

●活力増強や冷え性の改善に
ジャムなどの空きビン(できれば広口のもの)にイチョウ葉をつめ、全体が浸るまでウォッカを加え、フタをして2週間浸出してチンキ剤を作ります。浸出は暖かい所で行い、1日1~2回振り混ぜます。浸出が終わったらスポイトビンに移します。ローズマリーやペパーミントのハーブティーに適量を滴下し、毎日服用します。服用の際に口の中に含んでいると舌の下の粘膜の血管から吸収されるため効果が早く得られます。患者が肝臓疾患やアルコール禁忌の場合は服用する際に熱湯をかけてアルコール分を揮発させてから服用します。


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