忍野八海(山梨県) 水を生きる

忍野八海(山梨県)

富士の白雪

忍野の里には、富士山を覆う白雪が解け出したあと、その胎内を80年近くもへめぐった伏流水が、出口池、湧池、お釜池、濁池、底抜池、鏡池、銚子池、菖蒲池の八つの池となって点在している。地元の人たちが『忍野八海』と呼ぶのは、忍野の里に湧き出した富士山の伏流水が、海無し県の山梨にとって、海にも匹敵するほどの有り難い富士の恵みだからだ。「日本の百名水」に選ばれていることからもそのことがうかがえる。

富士山が初冠雪した日に忍野八海を散策すると、折良く水辺に茂る木々の木の葉もほんのりと染まり始め、冬の匂いが近づいていた。どの池も清い水が湛えられ、その透明な水底に鱒や鯉が群れていた。底抜池で、腰掛けに手頃な石に座りしばらくぼんやりと水面を眺めていると、正面に立つ大きな木から一枚の色づいた葉っぱが落ちてきて軟着水した。するとそれを狙ってか、淵にひそんでいた虹鱒がボチャンと水音を立てて飛び上がって波紋ができた。波紋は幾重にもなってゆっくりと私の方へ押し寄せてきた。


忍野八海(山梨県)


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